「ニッポンカレー原点×今」ジャパニーズカレーフェスティバル2023 クロストークショーレポート

「ニッポンカレー原点×今」ジャパニーズカレーフェスティバル2023 クロストークショーレポート

2023年8月に、東京渋谷で開催されたジャパニーズカレーフェスティバル。本記事では、同イベントのオープニングを飾ったトークショー「ニッポンカレーの原点×今」の様子をリポートします。トークショーには、ハウス食品よりルウやスパイス製品の開発、事業立案や企画に携わるメンバーがゲストとして登場。8月14日にハウス食品から新発売された「X-BLEND CURRY(クロスブレンドカレー)」のこだわりや、カレーマニアも注目する「おうちカレー」の変遷を辿ります。

カレーマニアに聞く! 最近食べた印象的なカレーは?

松さんアイコン写真

ジャパニーズカレーフェスティバルへようこそ! このイベントのプロデューサーを務める「カレー細胞」こと松宏彰です。「渋谷をカレーの街に!」というコンセプトの元、日本全国からカレーの人気店を集めて最新トレンドを発信していくイベントがジャパニーズカレーフェスティバルです。ところで今、日本のカレーが“日本食の代表格”として、世界から注目されているのをご存知ですか? まずは、ここにゲストとして登壇いただいているカレー好きのみなさんに、最近食べた中で印象に残っているカレーをお聞きしたいと思います。

小宮山さんアイコン写真

音楽ユニット「ホフディラン」のヴォーカル、キーボードを担当するミュージシャンであり、カレーマニアでもある小宮山雄飛です。僕は全国のいろいろなカレーを食べ歩いているので、同じ店に何度も行くことはないんですが、東京ディズニーランド®のハングリーベア・レストランは別。こちらは40年前に東京ディズニーランドが開園した当時からあるレストランで、ハウス食品のカレーが食べられるんです。僕はディズニーランドマニアでもあるので、ここのカレーを数か月に一度は食べています。何度食べても、めっちゃおいしい!

髙田さんアイコン写真

ハウス食品でルウカレーの事業立案・企画マーケティングを担当している髙田です。私は千葉に住んでいるのですが、「印度料理シタール」さんのカレーをよく食べます。バターチキンがおいしいお店なのですが、コクがあるのに重すぎない味わいが気に入っています。

松山さんアイコン写真

ハウス食品で家庭用ルウ製品の開発を担当しています、松山です。私が最近食べたのは、東京・町田にある「リッチなカレーの店 アサノ」さんのカツカレーですね! カツに合うカレーをかなり研究されているということですが、カツとカレーの新しいマリアージュ体験にはたしかに驚きました。

江守さんアイコン写真

ハウス食品でスパイス製品の事業立案・企画マーケティングを担当している江守です。ハウス食品は、本社や研究所、全国の工場に社員食堂があるんですが、そこではハウス食品のカレールウで作る日替わりカレーが食べられます。あえてアレンジは加えず、パッケージの裏面通りに作られているのですが、食べるたびに改めておいしいと感じますね。

松さんアイコン写真

僕は、最近発見した神戸・三宮の街中華カレー「第10兵庫楼(ヒョウゴロウ)」かな。カレー、オムライス、とんかつが一度に楽しめる、ヤバいカレーなんですよ。みなさんカレー好きなだけあって、それぞれ全く違うのがおもしろいですね!

多様化する日本のカレー。あなたにとってカレーとは?

トークショーの様子

カレー細胞さん:それぞれの好きなカレーを聞くと、カレーも多様化してきていることがわかりますね。みなさんにとって“カレー”ってなんですか?

髙田さん:私にとってカレーは、発見の宝庫。家でカレーを作る時は、スパイスを選ぶところからはじめることもあります。どのスパイスをどのような組み合わせでどう使うかで毎回違う味になって、新しい発見もありつつ、それでいておいしくできあがるのが楽しいところですね。

小宮山さん:カレーの定義に正解ってないですよね。辛くなくてもカレーだし、汁っぽくても、汁気が少なくてもいいし。作る人、食べる人が「これはカレーだ!」と言えば、カレーですよね。

松山さん:私にとって、カレーは元気の源です。仕事で毎日カレーを食べていますが、煮詰まった時、疲れた時、落ち込んだ時にカレーを食べると元気になります。パッとひらめきがあったり、力が湧いてきたりもしますよ。

江守さん:僕にとってカレーはなくてはならないもの。自分の幼い子どもに食べさせる時も、カレーに入れれば何でも食べてくれますから(笑)。我が家に欠かせないものですね。

カレー細胞さん:ぼくはね、カレーって記憶かな、と思います。子どものころに食べたカレー、いわゆる「おうちカレー」を基準にしつつ、いろいろなカレーを食べるたびに、その時々の記憶がつくられませんか? そう考えると、カレーは想い出にアクセスする食べ物だと思います。

時代とともに変化する「バーモントカレー」

バーモントカレー商品パッケージ
今年で60周年を迎えるバーモントカレー

カレー細胞さん:おうちカレーの代表と言えば、「バーモントカレー」ですよね。しばらく食べていなかった時期を挟んで久しぶりに食べてみると、子どものころに食べた味と「変わらない」と感じたんですが……。

髙田さん:バーモントカレーは今年で発売60周年を迎えます。よく「変わらない味」と表現されますが、実は時代に合わせて味を改良して、常に進化しているんですよ。

カレー細胞さん:そうなんですね! ではまず、初期のバーモントカレーについて聞きたいのですが、そもそも「バーモントカレー」はどのようにして誕生したんですか?

髙田さん:1963年の発売当時は、カレーと言えば辛くて粘度が低いサラッとしたものが主流で、ターゲットは男性中心でした。でも、「もっと色んな人が楽しめるカレーがあるはずだ」と調査を重ねた結果、注目したのが、子どもに辛いカレーを食べさせる時に家庭でされていたさまざまな工夫。牛乳を加えたり、すりおろしりんごを加えたりして、辛いカレーを甘くまろやかにしていたんですね。そこで、りんごやバナナなどいろいろな果物を試してみた結果、りんごとはちみつの組み合わせを発見したんだそうです。

カレー細胞さん:なるほど。バーモントカレーの誕生で、子どもから大人まで、家族そろって同じカレーを手軽に食べられるようになったんですね。

髙田さん:先程あったとおり、バーモントカレーはよく「変わらない味」と表現されるのですが、時代に合わせて味を変えること15回。のべると、4年に1度のペースで改良を重ねていることになります。りんごとはちみつのまろやかさをアップさせたり、ごまアレルゲンを抜いたり、コクをきかせてみたりなど、何度も配合を変えているんです。味だけでなく、パッケージも少しずつ変わっているんですよ。

小宮山さん:オリンピックと同じ頻度で改良を! 時代によって、消費者の味の嗜好も少しずつ変化しているんですね。パッケージも懐かしいなぁ。今の話、めちゃくちゃおもしろかったので、今度ジャワカレーやこくまろカレー編も聞きたいですね(笑)。

バーモントカレーシリーズの商品ラインナップ
中辛や辛口といった辛さのバリエーションや、アレルギーを考慮したシリーズ、カロリーオフのシリーズなども充実 2023年2月には、より手軽にバーモントカレーが楽しめるレトルト商品も新発売

10年ぶりに誕生した新カレールウ「X-BLEND CURRY(クロスブレンドカレー)」

カレー細胞さん:今、小宮山さんからも名前が挙がりましたが、ハウス食品さんは「バーモントカレー」の他にもおうちカレーの定番カレールウがありますよね。

髙田さん:ハウス食品の三大カレールウとして、「バーモントカレー」「ジャワカレー」「こくまろカレー」があるのですが、約10年ぶりに大箱カレールウの新商品「X-BLEND CURRY(クロスブレンドカレー)」が8月14日に発売されます。
 
カレー細胞さん:今日、試食させていただけるのがそのカレーですね。

会場に並べられたハウス食品のカレールウ
会場にディスプレイされた、バーモントカレー、ジャワカレー、こくまろカレーと、新発売のX-BREND CURRY(クロスブレンドカレー)

髙田さん:「スパイスの華やぐ香りと心地よい余韻」が楽しめるカレールウです。辛いことを“スパイシー”と表現することもあって、「スパイス=辛い」というイメージを抱く方も多いかもしれませんが、本来スパイスは香りを味わうためのもの。さらに加熱・焙煎することで、香りが華やぎ、心地よい余韻が生まれます。「X-BLEND CURRY(クロスブレンドカレー)」ではこういった「スパイス感」を大切にしています。

カレー細胞さん:スパイシーではなく、「スパイス感」なんですね。開発に至った経緯を教えてください。

松山さん:コロナ禍で家で過ごす時間が増え、家庭でのスパイスの使用頻度が高まりました。合わせて、近年の嗜好の多様化から、カレーによりスパイス感を求める人々も増えてきました。そこでおうちカレーのトップメーカーとして、「スパイスが主役のおうちカレーを作ろう!」と新しいチャレンジがスタートしたのです。

小宮山さん:コロナ禍で、家庭でのスパイス需要が増えたのはわかる気がしますね。私の家にも、GABAN®のスパイスが全部ありますよ!(笑)  ちなみに、この商品の名前にも入っている「X(クロス)」とはどこから来ているんですか?

髙田さん:いくつもの要素の“掛け合わせ”というところにちなんでいます。ハウス食品が培ってきた「おうちカレー」にトレンドのインド風スパイスを掛け合わせることで、大人が満足する味わいでありながら、子どももいっしょに楽しめる食べやすさを実現しました。スパイスフルですが辛くはないので、子どももおいしく食べられます。

X(クロス)に込めた意味

カレー細胞さん:職業柄、カレーのルウもパッケージ裏の原材料などをつい見てしまうんですが、たくさんのスパイスが記載されていることにおどろきました。まさに、スパイスフルですね。

松山さん:スパイスの種類だけでなく、産地や加工度合いの違いを組み合わせて、複雑で豊かな香りとうまみを際立たせています。味を強くするとスパイスの香りが立ちづらい傾向にあったので、小麦粉や油脂の種類や量も見直し、計3,000回以上の試作を経て完成された自信作です! 

江守さん:スパイスは色々な種類を使うことで、一つ一つの香りは残しつつも、全体では角がとれて良いバランスになるんです。実際に「X-BLEND CURRY(クロスブレンドカレー)」を食べていただくと、スパイスの調和を感じていただけるかと思いますが、いかがですか?

カレー細胞さん:最初に甘みが来て、すぐにスパイスの香りがふわっと広がります。食べ終わったあとも口の中に心地よいスパイス感が残りますよね。コクを調味料でつけると香りが立ちにくくなるけど、おうちカレーはコクがないと満足感が得られない。「X-BLEND CURRY(クロスブレンドカレー)」はスパイスの風味でコクを生み出しているんですね。

小宮山さん:僕は甘口と中辛、どちらも食べたんですけど、甘口でもただ甘いわけではなくしっかりとスパイス感があるんですよね。これこそ、辛さとは別軸のスパイス感。たしかに、子どもから大人までおいしく食べられる味だと思いました。

「X-BLEND CURRY(クロスブレンドカレー)」に使われている代表的なスパイス

江守さん:「X-BLEND CURRY(クロスブレンドカレー)」はたくさんの種類のスパイスを使っているカレールウです。主に使われているスパイスは5種類で、それぞれに特徴があります。スパイス=辛いということではなく、柑橘系や清涼感のある香り、甘いバニラのような香りなどをブレンドして使うことで、一体感のある香りを作り出しています。

10倍の時間をかけて作った「GABAN®カレーパウダー」

壇上にディスプレイされる「GABAN カレーパウダー」
壇上にはディスプレイされた「GABAN® カレーパウダー」

江守さん:ルウカレーでお馴染みのハウス食品ですが、スパイスに特化した商品をここでご紹介したいと思います。壇上にも並べられている「GABAN® カレーパウダー」は、スパイスの加熱・焙煎にこだわって作った新しいタイプのカレーパウダー。GABAN®は業務用に長けたブランドですので、名立たるトップシェフの声を聞き、商品開発をしています。その中で「従来のカレーパウダーだと、ソースやフォン(出汁)に味や香りが負けてしまう」というお話がありました。そこでこだわりのプロの味に負けないカレーパウダーをと、10年の研究を経て誕生したのが、「GABAN® カレーパウダー」なんです。

『GABANカレーパウダー』製法特徴

江守さん:一般的なカレーパウダーは複数のスパイスを合わせて一気に加熱・焙煎するのですが、「GABAN®カレーパウダー」は20種類以上のスパイスの特徴が引き立つように分けて加工して、それらをパズルのピースのように合わせています。一般的なカレーパウダーの10倍の時間をかけて製造している商品なんです。すでに香りが立っているので、加熱せずにそのままふりかけて使えます。ちょっと変わった使い方としては、納豆に加えるとコクが増して美味しくなりますよ。

これからも変化し続けるニッポンのカレーに注目!

日本は、毎日のようにどこかで誰かがカレーを食べている国。子どものころから食べ慣れているおうちカレーと、どんどん多様化する外食カレー。どちらも互いに刺激し合って、融合したり、発展したりしながら、変化を続けるニッポンのカレーから目が離せませんね。

※掲載情報は、2023年9月時点のものです。

登壇者プロフィール

松さんプロフィール写真

松 宏彰(まつ ひろあき)(カレー細胞)

カレーキュレーター
あらゆるカレーと変な生き物の追求。生まれついてのスパイスレーダーで日本全国・そして海外あわせ4,000軒以上のカレー屋を渡り歩く。カレーイベントの主催、雑誌のカレー特集執筆、「マツコの知らない世界」などTV出演も多数。本業はCM、アニメなどを手掛ける映像クリエイター。

小宮山さんプロフィール写真

小宮山 雄飛(こみやま ゆうひ)

ホフディラン
ホフディランのヴォーカル・キーボードバンド活動に留まらず、食通としても知られ、「音楽界のグルメ番長」の異名を持つ。渋谷区観光大使。美味しい渋谷区プロジェクトCEO(Chief Eat Officer)

髙田さんプロフィール写真

髙田 浩平(たかだ こうへい)

ハウス食品 食品事業本部
ハウス食品入社後、社内資格「スパイスマスター」を取得。セミナー・イベントなどでの講演を通じてスパイスの魅力を発信してきた。スパイスシーズニング製品の研究・開発を経験後、現在はルウカレーの事業立案・企画マーケティングを担当している。

松山さんプロフィール写真

松山 南(まつやま みなみ)

ハウス食品 開発研究所
ハウス食品入社後、ルウカレー製品の研究・開発を担当。多くの主力製品の味創りに携わる。若手ならではの新しい視点・アイディアを生かして製品開発に取り組む。また研究・開発のみならず、新規事業創出に向けた事業立案も行う。

江守さんプロフィール写真

江守 祥一(えもり しょういち)

ハウス食品 食品事業本部
ハウス食品入社後、首都圏でカレー・スパイス他の営業に従事。現在は社内資格「スパイスマスター」を取得し、スパイス製品の 事業立案・企画マーケティングを担当している。

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